気付かぬうちに寄せていた期待は、意味を持つ前にあっさりと崩れ去ってしまった。絆されていたと認めてしまえば存外に肩の荷がおりるようで、徐々に走る足を緩めて角を曲がったところでようやく一息ついた。
溺れそうな感覚は喉をひりひりと痛めつけ、自身が今両の足で立てているのかさえも曖昧にする。
追ってくる気配がないことを確認してから、ポケットに入っていたスマホを取り出す。揺れるストラップを見つめてようやく深呼吸をすることができ、目尻に溜まった涙を拭う。
黒地に黄色で彫った“棗”という文字。鬼龍でお揃いにしたストラップだが、本当なら逃げ出した私には持つ資格のないものだった。
外す勇気が出なかったそれを握って両の膝に顔を埋め、腹のうちを食い破りそうな願望を吐く。
「早く、死にたいよ......」
小さく細く落とされた願望は、拾われることはないと思っていたのだ。
「それは困るなぁ」
不意に上から落とされた声。
顔を上げなくても分かるそれに、滲みそうになる涙を膝に押し付けてなんとか堪える。
「まだ電話も掛けてないのに」
泣きそうになるのを止められないままに顔を上げれば、透き通るような茶色い髪を揺らして私の心を読んだなどと冗談を言う。
差し出された手は私の手より大きくて、私よりずっと優しい手だ。
「疲れたんでしょ、おいで」
その手に縋るように伸ばせば、ぐっと引っ張りあげられ抱き寄せられた。
鼻腔に広がる香りは私を落ち着かせる彼の匂いで、優しく頭を撫でる手の温かさにさらに彼に身を寄せる。
溺れそうな感覚は喉をひりひりと痛めつけ、自身が今両の足で立てているのかさえも曖昧にする。
追ってくる気配がないことを確認してから、ポケットに入っていたスマホを取り出す。揺れるストラップを見つめてようやく深呼吸をすることができ、目尻に溜まった涙を拭う。
黒地に黄色で彫った“棗”という文字。鬼龍でお揃いにしたストラップだが、本当なら逃げ出した私には持つ資格のないものだった。
外す勇気が出なかったそれを握って両の膝に顔を埋め、腹のうちを食い破りそうな願望を吐く。
「早く、死にたいよ......」
小さく細く落とされた願望は、拾われることはないと思っていたのだ。
「それは困るなぁ」
不意に上から落とされた声。
顔を上げなくても分かるそれに、滲みそうになる涙を膝に押し付けてなんとか堪える。
「まだ電話も掛けてないのに」
泣きそうになるのを止められないままに顔を上げれば、透き通るような茶色い髪を揺らして私の心を読んだなどと冗談を言う。
差し出された手は私の手より大きくて、私よりずっと優しい手だ。
「疲れたんでしょ、おいで」
その手に縋るように伸ばせば、ぐっと引っ張りあげられ抱き寄せられた。
鼻腔に広がる香りは私を落ち着かせる彼の匂いで、優しく頭を撫でる手の温かさにさらに彼に身を寄せる。
