なにも言葉を返さない私に胸倉を掴もうと伸ばされる手。倖が制止の声を上げるも止まる訳もなく、その手を掴んで捻りながら足を払って床に転がってもらう。
 見開かれた瞳は何をされたか分からないと言った表情で、しかめられた眉には焦燥があった。

「寵姫? 幹部がこんな体たらくで、一体なにを守れるの?」

 2人の顔は羞恥と悔しさにしかめられ、私は期待外れに溜め息を漏らす。
 こんなにも脆い彼らが私を守ると言う姿に、あの炎は消せやしないのだ。
 部屋をあとにして降りる階段の下には、警戒に身を強ばらせる男たちがおり、上での音に何事かとこちらを見ていた。彼らに手を出すつもりはないが、もちろん彼らから手を出したのならそれは正当防衛になるだろう。
 無用な暴力をこれ以上してしまわぬように、足早に出て行こうとするが背中に声をかけられる。

「棗!」

 振り返る先には金色があり、こちらを見下ろす彼には申し訳なさが浮かんでいた。
 どうして修人がそんな顔をするのか。
 明らかに周りよりも整った顔立ちに暗い色は似合わないというのに、彼はゆっくりと降りてくる。
 八つ当たりしそうになり、感情のコントロールを失いかけているのを自覚する。否、コントロールなんてとうに失っているのだ。けれど、右手首がじくじくとした熱を持って理性的であれと言い続ける。

「あなた達のこと、期待した私が馬鹿だった」

 近寄って来る彼から逃げるように飛び出し、口内に籠った諦めの捨て台詞を吐き捨てた。