悶絶してしゃがみ込む蒼に、レオは定規をしまいながらチューハイを冷蔵庫に戻す。

「安心しろ、角じゃない」

「角じゃなくても痛いよ! この馬鹿力!」

 目尻に涙を薄らと浮かべる蒼を軽くあしらうレオは蒼の扱い方を熟知しているらしく、抗議の声も宙に霧散しているようだ。
 シュンとしている蒼に犬の尻尾と耳が見えるようで、どちらも力なく垂れているのだからいたたまれない気持ちになってくる。可愛いと男の子である彼に言うのは失礼だろうが、そう形容するには十分な見目をしているのだ。
 隣に腰掛けてきた修人を見上げ、今更ながらな質問をする。

「で、なんでこんなところに連れて来たの」

 傾げられた首に合わせ、こちらも首を傾げる。
 質問の意図を汲み取りかねているのか、彼のその行動にこちらも訳が分からないとしか言いようがない。
 見かねたレオがそんなことも分からないのかと鼻で笑うのに怒る気力もないのだが、痛むこめかみを押さえられないのが惜しい。とはいえヘルメットを取る気もないので溜め息とともに立ち上がる。
 しかし体はぽすんとまたもソファに沈み、手を掴んだのは言うまでもなく修人であった。
 見上げた先の赤は何を考えているのか分からないままで、離してと言えばあっさりと引き下がる。

「1人で帰らせるわけにはいかないんだよー、なっちゃん。もうお姫様になっちゃったんだしさー」

 目の前に座り込み、私の太ももの上に顎を乗せて見上げてくる蒼の丸い瞳に時が止まったのかと思った。