それを聞いて納得したのは倖で、彼は安心してくださいと先生を見やった。彼も彼で納得しているようで、兄弟揃って同じ微笑みをされても困る。
私だけが未だ疑問が渦巻いていて、把握できていないのだ。
「ここは男子ばかりですからね、傷害沙汰なんて良くあることですよ」
「血気盛んであるうちは元気な証拠、若さ故の過ちは繰り返すべきことですから。過ちを通して大いに学ぶ、それがうちの理事長の言葉です」
「つまりお咎めなしってことだよ、なっちゃん」
さすがの私も驚きと呆れを隠せない。それは果たして教育者としてどうなのだろうかと思わざるを得ない。
ここの校風がというよりも、変わっていたのは理事長であったらしい。
ともあれ、変な理事長の変な方針のおかげで救われたことに変わりはなく、教師であり被害者でもある先生がそれで良しとするのであれば、これ以上掘り返すのも利はない。
彼等がそんなものだというのであれば、従う他ないだろう。
納得できない部分もありつつも、絡む蒼を退かすのを諦めると、唐突な別の疑問が浮上する。
「で、なんで泣いてたの?」
見上げてくる蒼の瞳には純粋な疑問しかなく、純粋であればこそつつかれたくないものもある。
泣いていた、泣いていたのだろう。
頭の中は混乱でぐちゃぐちゃに掻き回され、何よりもちらつくあれにどうすることも出来なかったのだ。目を覆ってしまうことができたなら良いのだろうけれど。
「なんとなく」
先生の顔が罪悪感に歪みそうになるのを、私は首を振って止めれば、彼は眉間に皺を寄せたままに不器用に笑う。気に病む必要なんてないのに、優しい人なんだろう。
私だけが未だ疑問が渦巻いていて、把握できていないのだ。
「ここは男子ばかりですからね、傷害沙汰なんて良くあることですよ」
「血気盛んであるうちは元気な証拠、若さ故の過ちは繰り返すべきことですから。過ちを通して大いに学ぶ、それがうちの理事長の言葉です」
「つまりお咎めなしってことだよ、なっちゃん」
さすがの私も驚きと呆れを隠せない。それは果たして教育者としてどうなのだろうかと思わざるを得ない。
ここの校風がというよりも、変わっていたのは理事長であったらしい。
ともあれ、変な理事長の変な方針のおかげで救われたことに変わりはなく、教師であり被害者でもある先生がそれで良しとするのであれば、これ以上掘り返すのも利はない。
彼等がそんなものだというのであれば、従う他ないだろう。
納得できない部分もありつつも、絡む蒼を退かすのを諦めると、唐突な別の疑問が浮上する。
「で、なんで泣いてたの?」
見上げてくる蒼の瞳には純粋な疑問しかなく、純粋であればこそつつかれたくないものもある。
泣いていた、泣いていたのだろう。
頭の中は混乱でぐちゃぐちゃに掻き回され、何よりもちらつくあれにどうすることも出来なかったのだ。目を覆ってしまうことができたなら良いのだろうけれど。
「なんとなく」
先生の顔が罪悪感に歪みそうになるのを、私は首を振って止めれば、彼は眉間に皺を寄せたままに不器用に笑う。気に病む必要なんてないのに、優しい人なんだろう。
