「馬鹿にする気はないけれど、これが私から見た事実なの。だからって気にしないで、悪いってわけじゃないから。これはただの感想に過ぎない、一方的な言葉だから」

 これじゃあ謝罪にも弁解にもなっていない。
 けれど口から出てしまった以上、取り消すには彼等の記憶を消すしかない。けれど私にそんな都合の良い能力なんてあるはずもなく、やはりこれはもう撤回の余地はないのだと受け入れる他ないのだ。
 もう何も言うことなく私が教室を出ると、彼等を苦しめる圧迫感はなくなり解放される。
 微かな物音がしたが、それでも追ってくる気配はなく、一先ず心を落ち着ける。
 四人の解放とともに、私もまた四人から解放された。
 あんなにも綺麗な人達と同じ空間にいたら、きっと私は笑ってしまう。笑えないけれど、笑ってしまう。
 なんて、自分でも自分を物騒だと思う。
 けれど、これで確実に一線を引けた。私と、あの人達との間に。
 明確で、透明で、不可視の大きな壁とともに。
 私は汚れているから。罪を背負っているから。
 それなのに、あんなのが近くにいたらと思うと恐ろしくて堪らない。もしも、私が忘れてしまったら。のうのうとした平和な世界へと足を踏み入れてしまったとしたら。
 耐えられない、そんなのは許容できない。
 きっと、自身の犯した罪の重さで潰れてしまう。
 ふと蘇った先生の言葉に、思わず笑みが零れる。
 “頼る”――私に赦されることのない、それは酷く残酷なものだ。何かを知ってこその言葉は、私が受け取れるはずもない、夢みたいな話。