倖が私の表情を読み取り、含み笑いをしながら代弁する。引くというよりも、引きつってるという表現が正しいのだが、この際それは些細な問題に過ぎない。

「ねぇ、棗ちゃん。そんなに俺らのこと嫌いなの?」

「そりゃあもうこれでもかってくらい」

 即答だった。
 同じことばかりを繰り返し、もう言い飽きるくらいだ。
 蒼が丸い瞳で私を見るのに、責められている気持ちになる。

「どうしてそんなに」

 理由がなくちゃいけないことなのか。
 大抵の人にもあるはずだ。なんとなく嫌いだとか、そういったものが。一々すべてに理由をつけていたらキリがない。
 それも彼等が根本的に解っていないからと思えば、仕方ない話なのだが、私は正直に言った。

「弱いから」

 弱くて、正直で、純粋で、真っ直ぐなそれに汚れを知らない瞳が何よりも如実に物語っている。
 あの、真っ黒で真っ暗な真っ赤に染まった世界に、汚泥の如き人々と混濁の瞳で足掻く私。
 なんて馬鹿な人達なのだろう。
 弱さを憎むことしかできないのも、それが何にもならずに蓄積されだけのものと知っているのも私。この人達には何の関係もないというのに。

「弱いって、どういうこと」

 明確な怒りを持った玲苑の声。そのままの意味、と返せば彼は私をさらに強い目で睨んだ。

「ただの女のくせに」

 倖の制しの声も遮り、告げられた言葉ははっきりと私の耳へと届いた。
 安い挑発をかけたのは私なのに、私を守ろうとするのか。要らない世話だ。

「女でも、馬鹿にされて黙っとくわけにはいかねぇよ」