彼は副総長。得体の知れない奴に対して警戒するのは当たり前で、もちろん情報がなければ集めるに決まっている。
 狼嵐に危険分子を近付けさせないために、あらゆる情報網を使い、私について調べ上げたたのだろう。昨日の今日、一度面識があるくらいの私に信用も信頼もない。それは私も同じなのだけれど。

「本当に、......本当に失礼ですね。プライバシーの侵害というのをご存知でないなら、一度調べた方が賢明ですよ。私は、あなた達に関わらないと言いましたよ」

 倖はまだ何か言いたそうに口を開いたが、修人に諌められ、それ以上は言及せずに黙ってしまった。
 知らなくていいことを、わざわざ知る必要はないのだ。それが彼等のタメにもなるのだから、と少しばかりの偽善が首をもたげる。

「あ、ここにいたんだ」

 避けた倖の横をすり抜け、出て行こうとするとひょっこり顔を出した蒼と玲苑。なんで増えるのかな。
 うんざりとした気分が、より一層憂鬱なものへと変わる。今日は厄日か、と叫びたくもなる。
 蒼達の現れた扉とは反対の扉から出て行こうとすると、なっちゃんと呼び止める声がかかる。なんで関わろうとするの、なんで絡んでくるの、なんで踏み込むの。もうやめて。
 正直、今すぐこの怒りをどこかで発散して、鎮めたいものなのだが、如何せん私は一般人だということになっている。事を荒立てるわけにもいかない。
 勢い良く振り返り、警戒と驚きに染まる顔に思いっきり吐き捨てる。

「あなた達のことが嫌い、大嫌い、本当に心の底からどうしようもなく、憎いくらいに。もう関わらないでっ」