躊躇いつつも扉に手をかけると、若干重くガラリと開いた。吹き抜けた窓から流れた風に乗り、本の香りが鼻腔をつく。
「おや、珍しいですね。来客とは」
カウンターで出迎えたのは、我らが担任である深景先生だった。
途端に蘇る、昨日の言葉。
兄弟だと、確かあの黒髪の彼は言っていた。
後ろ手に扉を閉めつつ、よくよく見れば確かに倖に似ていると思わなくもない。
「ああ、篠原さんですか」
担任というのは司書も勤めるのだろうか。
彼は珍しいという来客者の顔を確認すると、すぐにカウンターへと引っ込む。何かの分厚い本を捲る横顔は様になっていて、教師職よりも司書の方がよっぽど似合う。
「ここ、担当の人がいないんですよ。だから俺が担当をしているんです。幸いなことに、本も嫌いじゃないですから」
私の頭の中を覗いてるような、そんな錯覚すら覚える回答。あまりにも無遠慮に向けられた視線に、先生は苦笑いしながら本を閉じた。
そうなんですか、とやはり曖昧にしか返せない返事。けれど先生は何も気にすることなどないらしく、何かを思い出したかのようにカウンター内を探り始めた。
一体何を探しているのやら、カウンター下へと頭を突っ込んだかと思うと、すぐに飛び出た先生。その手には一冊の赤い分厚い本が握られている。
先生が読んでいたものに比べればまだいくらかマシとは言えるが、それでも十分な厚さだ。というか、先生のはあれは異常な分厚さだ。
「篠原さん、篠原さん」
極上の笑顔で手招きする先生に、恐る恐るカウンターへと近寄る。そのまま差し出してきた本を手に取ると、不思議と手に馴染む本。素材はなんだ。
「おや、珍しいですね。来客とは」
カウンターで出迎えたのは、我らが担任である深景先生だった。
途端に蘇る、昨日の言葉。
兄弟だと、確かあの黒髪の彼は言っていた。
後ろ手に扉を閉めつつ、よくよく見れば確かに倖に似ていると思わなくもない。
「ああ、篠原さんですか」
担任というのは司書も勤めるのだろうか。
彼は珍しいという来客者の顔を確認すると、すぐにカウンターへと引っ込む。何かの分厚い本を捲る横顔は様になっていて、教師職よりも司書の方がよっぽど似合う。
「ここ、担当の人がいないんですよ。だから俺が担当をしているんです。幸いなことに、本も嫌いじゃないですから」
私の頭の中を覗いてるような、そんな錯覚すら覚える回答。あまりにも無遠慮に向けられた視線に、先生は苦笑いしながら本を閉じた。
そうなんですか、とやはり曖昧にしか返せない返事。けれど先生は何も気にすることなどないらしく、何かを思い出したかのようにカウンター内を探り始めた。
一体何を探しているのやら、カウンター下へと頭を突っ込んだかと思うと、すぐに飛び出た先生。その手には一冊の赤い分厚い本が握られている。
先生が読んでいたものに比べればまだいくらかマシとは言えるが、それでも十分な厚さだ。というか、先生のはあれは異常な分厚さだ。
「篠原さん、篠原さん」
極上の笑顔で手招きする先生に、恐る恐るカウンターへと近寄る。そのまま差し出してきた本を手に取ると、不思議と手に馴染む本。素材はなんだ。
