「聞こえてる? 何してんのって訊いたんだけど」
再度問い掛けられた男。
「何も、……していません」
「なにも、ねぇ?」
上から下へと流された視線に怯える彼だが、私への威勢の良さはどこへ行ってしまったのか。ひどく弱々しい震えた声で紡がれた言葉に、情けなさしか感じられない。
もしかして、もしかしなくとも蒼を恐れる男達。幹部たる蒼に問い詰められたなら、さぞかし生きた心地はしないだろう。先程得た情報から察するに、蒼はもちろん玲苑も幹部らしいので。
「その辺にしとけ、棗ちゃんも怖がってるだろ」
玲苑の制止に蒼は不服そうだが、それでも軽くなる空気に皆が安堵の表情を浮かべた。腰を抜かしそうな男もまた、良かったと呟いているくらいだ。
あまりにも滑稽に怯えていた男に、情けない思いながら視線を送る。すると向こうも睨んできて、泣きそうな顔のまま男達を連れて出ていった。
吠える前に、吠えられるほどの実力をつけてから来いよと、その背中に送り付けても、答えることはないのだ。
近寄る玲苑が大丈夫かと聞いてくるので、首を小さく縦に返せば、良かったと言う。良いことなんて何もないのに。
「なっちゃん大丈夫だった?」
蒼が机に顎を乗せ、大きな青い瞳でしたから覗き込む。それにどうしても重なって見えた子犬の姿に、ほんの僅かに可笑しいと思える。
ふっと、口元が綻ぶ。
目の前にいた蒼は、その途端すごい勢いで玲苑にしがみつく。服を引っ張る蒼の頭を、玲苑がすごい速さで連打し始めて、こちらが吃驚してしまう。
再度問い掛けられた男。
「何も、……していません」
「なにも、ねぇ?」
上から下へと流された視線に怯える彼だが、私への威勢の良さはどこへ行ってしまったのか。ひどく弱々しい震えた声で紡がれた言葉に、情けなさしか感じられない。
もしかして、もしかしなくとも蒼を恐れる男達。幹部たる蒼に問い詰められたなら、さぞかし生きた心地はしないだろう。先程得た情報から察するに、蒼はもちろん玲苑も幹部らしいので。
「その辺にしとけ、棗ちゃんも怖がってるだろ」
玲苑の制止に蒼は不服そうだが、それでも軽くなる空気に皆が安堵の表情を浮かべた。腰を抜かしそうな男もまた、良かったと呟いているくらいだ。
あまりにも滑稽に怯えていた男に、情けない思いながら視線を送る。すると向こうも睨んできて、泣きそうな顔のまま男達を連れて出ていった。
吠える前に、吠えられるほどの実力をつけてから来いよと、その背中に送り付けても、答えることはないのだ。
近寄る玲苑が大丈夫かと聞いてくるので、首を小さく縦に返せば、良かったと言う。良いことなんて何もないのに。
「なっちゃん大丈夫だった?」
蒼が机に顎を乗せ、大きな青い瞳でしたから覗き込む。それにどうしても重なって見えた子犬の姿に、ほんの僅かに可笑しいと思える。
ふっと、口元が綻ぶ。
目の前にいた蒼は、その途端すごい勢いで玲苑にしがみつく。服を引っ張る蒼の頭を、玲苑がすごい速さで連打し始めて、こちらが吃驚してしまう。
