私を抜いたここの人達は、顔だけ豪華でなんだか余計場違いに思えてくる。
「棗ちゃん、棗ちゃんもお願い」
玲苑のお願いに応える義理などない。全身で拒否の意を示すが、袖を引く蒼がそれを許さなかった。
そちらに向くと、一気に距離を詰めた蒼の吐息が耳にかかる。
「さっきの続き、する?」
囁きは色気を孕み、離れた瞳はひどく艶かしい。どこから出したんだそんな声と思う心を差し置いて、耳は弱いのだからやめてほしいと押さえる。
毎回蒼には主導権を握られている気がしてならない。可愛い顔をしたその悪魔に、拳でなら勝てるのにと唇を噛み締める。
何をされるかわかったもんじゃないと、半ばヤケクソに名前だけならと渋々小さく呟く。
「……篠原 棗、です」
不貞腐れたその声音に申し訳なさげに倖が、「蒼とレオと同じクラスなんですよね?」と訊いてくる。
そこに答える義理はない。けれど自己紹介という中で、さらに年上が相手では礼儀を弁えなくてはいけない。
散々あいつらには礼儀を大切にしろと言った手前、私が破るわけにもいかず、不本意ながらに頷きで返す。
横から伸びた蒼の手が、よく出来ましたと言わんばかりに撫でてくるのは本当に気に食わない。
「あぁ、そうだ棗ちゃん。棗ちゃんがここに来る前に住んでたところってどこ?」
ここに来る前ということは、私がこの街に来る前ということだろうか。何故そこまで知っているのかという疑問。
けれど、来る前に住んでいた所というワードに、無意識に心臓が、鼓動が速まるのを感じた。
「棗ちゃん、棗ちゃんもお願い」
玲苑のお願いに応える義理などない。全身で拒否の意を示すが、袖を引く蒼がそれを許さなかった。
そちらに向くと、一気に距離を詰めた蒼の吐息が耳にかかる。
「さっきの続き、する?」
囁きは色気を孕み、離れた瞳はひどく艶かしい。どこから出したんだそんな声と思う心を差し置いて、耳は弱いのだからやめてほしいと押さえる。
毎回蒼には主導権を握られている気がしてならない。可愛い顔をしたその悪魔に、拳でなら勝てるのにと唇を噛み締める。
何をされるかわかったもんじゃないと、半ばヤケクソに名前だけならと渋々小さく呟く。
「……篠原 棗、です」
不貞腐れたその声音に申し訳なさげに倖が、「蒼とレオと同じクラスなんですよね?」と訊いてくる。
そこに答える義理はない。けれど自己紹介という中で、さらに年上が相手では礼儀を弁えなくてはいけない。
散々あいつらには礼儀を大切にしろと言った手前、私が破るわけにもいかず、不本意ながらに頷きで返す。
横から伸びた蒼の手が、よく出来ましたと言わんばかりに撫でてくるのは本当に気に食わない。
「あぁ、そうだ棗ちゃん。棗ちゃんがここに来る前に住んでたところってどこ?」
ここに来る前ということは、私がこの街に来る前ということだろうか。何故そこまで知っているのかという疑問。
けれど、来る前に住んでいた所というワードに、無意識に心臓が、鼓動が速まるのを感じた。
