俺はそれだけ吐き捨て、勢い良く扉を閉めた。
 彼らが死んだら棗は少しだけ泣くだろうが、それでも俺たちが傍にいる限りもうそんな思いをさせることはない。彼らは忠告も守れず、弱いから死んだのだ。
 人の忠告は聞いておいた方がいいものだというのに。
 スマホを取り出すとお揃いのストラップが揺れ、棗のことを思い出す。
 しかし、悠長にしていられる時間もなく、登録してある番号に掛けるとすぐに繋がった。
 返ってくるのは心葉の声で、すぐ近くには紘もいることだろう。アテが外れたと手短に報告すれば、心葉はそうだろうねと返してくる。

「このまま本家に向かったと思う。俺たちも追いかけよう、ひとりで行かせるわけにはいかない」

『深景さんとももう連絡ついてるし、すぐに出せるって』

 どこか張り詰めた雰囲気が漂う心葉とは打って変わり、俺はさもなんでもないかのように振る舞う。

「本家の敷居を跨ぐなんて吐き気がするけど、棗がいるなら仕方ないよなぁ〜」

『綾、緊張感なさすぎ』

「紘にだけは言われたくないな」

 苦言を呈してきた紘は寝起きのような声で、そんな奴に謝る気など起こるはずもない。
 バイクに跨りエンジンを吹かせば、途端に電話の音声は聞き取りづらくなる。

「たまには分家の皆で本家の皆さんに挨拶に伺うとしますか。ついでに借りを返しちゃうのも悪くないよな」

 電話の向こうで心葉の呆れたような溜め息と、紘のどこか間の抜けた頷きの声が聞こえた気がした。