「鬼麟は、棗と従姉妹だというのは本当のことなのか?」

 棗が彼らに本当のことを教えていないのも、誰かに答えを求める彼らも、俺に少しだけ優越感にも似た気持ちを呼び起こさせた。
 棗は結局、彼らを置いていくと思えば胸が空くようで、俺はこの醜い感情が棗に知られなければ他はどうだっていいんだ。

「あいつが......“鬼麟”がそう言ったなら、それが本当なんだろ」

 真実を教えてやる必要もないし、そんなわけないと思っていてもそれに同調してやることもない。
 俺にとって大事なのは、棗の言葉なのだから。

「棗はどこにいる」

 その問い掛けと眼差しに、俺は少しだけ目を丸くさせる。
 狼帝から出るそれは最早仲間に対するものではなく、自身の好いた者を探す熱だった。
 こいつ、棗のことを好きなのか。
 それが分かってしまえば尚更居場所など教えるわけがないと、分かっていてそんな顔をしているのかと逆に問いたくなる。棗になにも聞かされていない時点でこいつはその程度の存在であり、信用も信頼もなにもない他人だ。
 俺的には勝手に死んでくれてもいいとさえ思っているが、それが嫌で棗はここに別れの挨拶に来たのだろう。

「何言ってんだ、お前? “棗”は俺たちの姫だぞ? これ以上お前らみたいなのを近付けさせるわけねぇだろ」

 俺たちにとって棗は総長でもあり、姫でもあるのだ。俺たちに守られることはないが、それでも泣いてる姿を見たくはないと思っている。
 あいつが泣くのなら、その元凶は全力でもってすり潰す。