修人と“鬼麟”はお互いに視線を交わしたまま口を閉ざしていたが、先に沈黙を破ったのは彼女だった。
「――お願いがあって来たの。あなた達が死なないために」
その言葉とともにスゥッと変わる目付き。
お願い、と胸中で反芻して見てもその意図を測れない。ましてや僕たちが死なないためという言葉にも違和感が付きまとう。
「もう棗はここに戻ることはない。だから探すのはやめて欲しい。そうすればあなた達が危害にあうこともないから、またいつも通りの生活に戻るだけ」
「分かるように言ってください。事実を隠したままではなにも納得など出来ません」
淡々と説明する彼女に、倖は苛立ちを込めて言った。
「棗は、亡くなったの。死んでしまったから」
ゆっくりと、噛み締めるように告げられた。死んでしまったという言葉が頭の中で反芻し、脳みそが彼女の言葉の理解を拒んでいる。凍った空気に息ができず、真綿が首を締められている錯覚に現実味がなくなっていく。
「だからこれ以上は時間の無駄ってことを教えに来たの。それに、これ以上探し続けていると開けなくていい蓋まで開けちゃうことになりかねない。特にあなたは踏み込むべきではないはずなのに、未だ静観されているのはあまりにも放任的過ぎる」
彼女は口調こそ落ち着いているものの、薄らと怒りを滲ませて修人を見ていた。修人が踏み込むべきではないと言う理由は分からないまま、彼女は溜め息を吐いて真っ暗な赤い瞳で僕たちを捉える。
「――お願いがあって来たの。あなた達が死なないために」
その言葉とともにスゥッと変わる目付き。
お願い、と胸中で反芻して見てもその意図を測れない。ましてや僕たちが死なないためという言葉にも違和感が付きまとう。
「もう棗はここに戻ることはない。だから探すのはやめて欲しい。そうすればあなた達が危害にあうこともないから、またいつも通りの生活に戻るだけ」
「分かるように言ってください。事実を隠したままではなにも納得など出来ません」
淡々と説明する彼女に、倖は苛立ちを込めて言った。
「棗は、亡くなったの。死んでしまったから」
ゆっくりと、噛み締めるように告げられた。死んでしまったという言葉が頭の中で反芻し、脳みそが彼女の言葉の理解を拒んでいる。凍った空気に息ができず、真綿が首を締められている錯覚に現実味がなくなっていく。
「だからこれ以上は時間の無駄ってことを教えに来たの。それに、これ以上探し続けていると開けなくていい蓋まで開けちゃうことになりかねない。特にあなたは踏み込むべきではないはずなのに、未だ静観されているのはあまりにも放任的過ぎる」
彼女は口調こそ落ち着いているものの、薄らと怒りを滲ませて修人を見ていた。修人が踏み込むべきではないと言う理由は分からないまま、彼女は溜め息を吐いて真っ暗な赤い瞳で僕たちを捉える。
