修人と同じ金と赤なのに、彼女はどこか怖さをもって近寄り難さを醸し出す。
突然消えた彼女が目の前に突然現れたのだ。事態を飲み込めずにいる僕を知ってか、倖もまた困惑を抱えたままの表情で口にした。
「彼女は、“鬼麟”です」
思わず、「は?」という声が漏れた。
だって彼女はなっちゃんにしか見えず、髪や目の色が違えども少しとはいえ一緒に過ごした彼女に他ならない。
どういうことなのかと、修人に視線を向けても彼は“鬼麟”の前に座ったままじっと見つめるだけで眉間には皺があった。彼もまた、この状況を見極めきれずにいるのだろう。
「――そう、私は“鬼麟”。“鬼麟”であって、棗じゃない。棗は私の従姉妹だから」
危うい笑みを貼り付ける彼女に背筋が寒くなる。声色もなっちゃんと同じだと言うのに、彼女はなっちゃんではないと言う。確かになっちゃんは以前“イトコ”がいるとは言っていた気がするが、それは今目の前にいる彼女を指していたのだろうか。
改めて目の前の彼女を見ても、なっちゃんにしか見えないが、けれどこんなにも危うさはなかっただろう。だからか、彼女が“棗ではない”と口にするそれが真実に思え、ゆっくりと記憶の中のなっちゃんと彼女が乖離し始める。
「棗はどこに行ったんだ」
修人は眉間に皺を寄せたままだった。
修人は“鬼麟”に以前救われたと言っていた。救われ、憧れ、そして今の姿がある。“鬼麟”との再会を望んでいたはずなのに、今の彼はその“鬼麟”に対して疑いの目を向けている。
突然消えた彼女が目の前に突然現れたのだ。事態を飲み込めずにいる僕を知ってか、倖もまた困惑を抱えたままの表情で口にした。
「彼女は、“鬼麟”です」
思わず、「は?」という声が漏れた。
だって彼女はなっちゃんにしか見えず、髪や目の色が違えども少しとはいえ一緒に過ごした彼女に他ならない。
どういうことなのかと、修人に視線を向けても彼は“鬼麟”の前に座ったままじっと見つめるだけで眉間には皺があった。彼もまた、この状況を見極めきれずにいるのだろう。
「――そう、私は“鬼麟”。“鬼麟”であって、棗じゃない。棗は私の従姉妹だから」
危うい笑みを貼り付ける彼女に背筋が寒くなる。声色もなっちゃんと同じだと言うのに、彼女はなっちゃんではないと言う。確かになっちゃんは以前“イトコ”がいるとは言っていた気がするが、それは今目の前にいる彼女を指していたのだろうか。
改めて目の前の彼女を見ても、なっちゃんにしか見えないが、けれどこんなにも危うさはなかっただろう。だからか、彼女が“棗ではない”と口にするそれが真実に思え、ゆっくりと記憶の中のなっちゃんと彼女が乖離し始める。
「棗はどこに行ったんだ」
修人は眉間に皺を寄せたままだった。
修人は“鬼麟”に以前救われたと言っていた。救われ、憧れ、そして今の姿がある。“鬼麟”との再会を望んでいたはずなのに、今の彼はその“鬼麟”に対して疑いの目を向けている。
