残るのは涙と血を流して意識を失っている男たちと、それを見てほうけている私だけ。
 正気に戻り始めれば不快感が押し寄せ、両手の震えに首を振る。
 こんなのは、あいつと変わらない。
 そう自覚してしまうと酷く恐ろしくなり、私は逃げるようにしてバイクへと跨った。
 怖い、と小さく漏らした声はエンジンの音に掻き消えてどこにも届きはしなかった。





 なっちゃんがいなくなったと気付くのに、それほど時間を要したとは思わなかった。それでも既にいなくなってから凄く時間が経っているかのような喪失感に、僕たちの中には暗い空気がいつも底に漂っていた。
 あの日を境に僕たちの前から姿を消し、夏休みに入っても彼女が現れることはなかった。
 僕たちはなっちゃんの家も知らず、知っているであろうミカゲンに当たっても首を振るだけ。僕たちは彼女のことをなにも知らなくて、仲良くなれたと思っていたのが馬鹿みたいだった。
 滅多に何かに執着を見せない修人が、なっちゃんのことを少しでも調べようと躍起になっていた。前々から思ってはいたが、修人は相当彼女のことを気に入っていたようで、その姿に倣うように僕たちも手を尽くした。
 それでも僕たちは彼女についてなにも情報を得ることは出来ず、ほぼ諦めかけていたところに集合がかかった。
 何かあったのかと出向けば、そこにいたのはなっちゃんだった。柔らかい髪はいつもの赤茶色ではなく金色になっていて、赤い瞳は暗く沈むかのように僕たちを見据えていた。