「鬼龍を抜けるのはいい。俺たちも下のやつらを巻き込みたいなんて思ってない。でも、それでも、俺たちには頼れよ!」
悲痛な声は私にはよく刺さる。
けれど俯くばかりの私に心葉は名前を呼んだ。
「棗!」
その名前はもう、私が名乗っていいものではない。
「私は、棗じゃない! 篠原でもないの! 私は雛菊......雛菊なんだよっ」
堪えきれない涙が頬を伝い、床に落ちて染みにもなれずに消えていく。
私にほら見ろと言わんばかりに笑うあいつが、脳内にチラつく炎の中からこちらを見ている。壊れているのはいつからか、私には分かるはずなんてないのに、疑問すらも喉を焼いて言葉にはならなかった。
「私は“篠原 棗”じゃない......」
そう言葉にしてしまえば、罪悪感が足元から這い上がる。手足の先は冷え、食いしばった唇から鉄の味がした。
彼らの顔を見ることでさえも恐怖を感じ、なにかを言われる前にと幹部室を飛び出す。
言い争う声が既に漏れていたのだろう。階段を駆け下りる私を見上げる仲間だった彼らは、困惑を隠すまでもなく顔に出していた。しかし話し掛ける暇など与えずに私は駆け抜け、バイクの停めてあるガレージに入る。
ポケットに入れていたキーを取り出し、震えそうになる手を制してエンジンをかける。雑音を払うかのようにアクセルを回し、バイクは唸り声を上げて飛び出した。
すべてを置き去りにするかのように風を切り、目的地もなく走り続ける。
悲痛な声は私にはよく刺さる。
けれど俯くばかりの私に心葉は名前を呼んだ。
「棗!」
その名前はもう、私が名乗っていいものではない。
「私は、棗じゃない! 篠原でもないの! 私は雛菊......雛菊なんだよっ」
堪えきれない涙が頬を伝い、床に落ちて染みにもなれずに消えていく。
私にほら見ろと言わんばかりに笑うあいつが、脳内にチラつく炎の中からこちらを見ている。壊れているのはいつからか、私には分かるはずなんてないのに、疑問すらも喉を焼いて言葉にはならなかった。
「私は“篠原 棗”じゃない......」
そう言葉にしてしまえば、罪悪感が足元から這い上がる。手足の先は冷え、食いしばった唇から鉄の味がした。
彼らの顔を見ることでさえも恐怖を感じ、なにかを言われる前にと幹部室を飛び出す。
言い争う声が既に漏れていたのだろう。階段を駆け下りる私を見上げる仲間だった彼らは、困惑を隠すまでもなく顔に出していた。しかし話し掛ける暇など与えずに私は駆け抜け、バイクの停めてあるガレージに入る。
ポケットに入れていたキーを取り出し、震えそうになる手を制してエンジンをかける。雑音を払うかのようにアクセルを回し、バイクは唸り声を上げて飛び出した。
すべてを置き去りにするかのように風を切り、目的地もなく走り続ける。
