赤べこもびっくりするくらい何度も高速に頷く彼らは、逃げるように倉庫内へと入って行った。まさに脱兎のごとくなその様に、自然と呆れと笑いが零れる。
 私たちも外にいては虫が寄ってくるだけなので、さっさと中へと入って幹部室へと戻った。そして一息をつくと、口を開いたのは心葉だった。

「狼嵐の奴ら、気付いたみたい」

 そう、と返しながら案外遅かったなどと考える。
 恐らくレオあたりが最初に気付いたはずだろう。彼は私のことを知っている唯一の人物だから、何かしらの網があったはず。確信にいたるまでが少し長かったが、掴み自体は早かったかもしれない。

「棗、どうする?」

 どうする、とその言葉を噛み砕くより早く口から漏れたのは単純な所感だった。

「どうもしないよ。彼らにはどうもできないから」

 彼らに私の想定を越えられる何かができるとは到底思えない。偏見と言われようとも、短期間彼らと過ごした上での考えだ。
 何よりも、彼らに構ってられるほどの余裕なんてないのだ。

「それより、“雛菊”になにかなかった?」

 途端に空気が変わる。
 一様にして彼らは俯き、絞るように出される声には覇気がない。

「......死んではない。ただ、ずっと眠ってるんだ」

 喉の奥が痛かった。締まって、声を発しようとしても上手く出来なくて、鼻の奥がツンとしたように痛くなる。
 私が遊んでいたせいだと、側頭部を殴られたかのような衝撃があった。
 心葉の声も辛そうで、綾も紘も眉間に皺を寄せていた。