何事も経験だ。私が彼らの立場と同様になり、彼らの考えを学ぶことでその行動に対して許容範囲が広がるかもしれない。
 妥協案に近いものの、それなりに名案ではないだろうかと思っていたが、私の考えとは真逆に彼らは顔を青くさせて懇願する。

「すいませんでしたぁ!」
「俺たちが悪かった!」
「それだけはやめてくれ! やめてください!」
「死ねってこと? 俺たちに死ねってことなの!?」

 許しを乞うというよりも、最早命乞いをしているのは恐怖から来るものだ。それがなにに由来するかと言えば明白で、先程から私に刺さりまくる視線と負のオーラを放つ紘にだろう。
 こうなることは目に見えていたのだから、せめて私の前で女にうつつを抜かすような態度を取らなければいいのに。必死な彼らに呆れつつ、いい加減立たせてやれば紘をなるべく見ないようにしつつ見回りへと戻るようにと指示する。
 その背中を見送りながら自己嫌悪へと身を浸す。
 勝手に出て行き突然戻って来たかと思えば、横暴な態度と暴力による支配。あまりにも自己中心的な私に、彼らに申し訳なさがあった。
 女遊びなんてさせればいいのだ。だけど、それが昼の女たちなら私もここまで口を挟まなかった。今は夜で、客を呼ぶのはネオンを纏う女たちだ。
 私が知っていることなどほんの僅かで、すべては私が何も持っていないせい。彼らを危険に合わせたくないとしながらも、彼らとの時間に身を置きたいという矛盾した考えが私の首を締めていた。