私の変化に気付いた紘はスっと離れると、両手を合わせて拝むようにしている。
 とびきりの笑顔を顔に貼り付け、殺気を怒りで包んで男たちへと歩み寄る。怯える彼らと蜘蛛の子を散らすように逃げる女性らに、私はそこまで怖がることはないだろうと内心ぼやく。
 優しさは時に厳しさを伴うものだ。

「全員歯ァ食いしばれや」

 通りに響くのは鈍い音と、短い呻き声。
 全員に一発ずつの制裁を下すと、紘は憐れみの目で彼らを見ていた。


「「「すんませんでした」」」

 大袈裟にも土下座をして許しを乞う彼ら。こんなものを往来で見せるべきではないため、路地へと入って冷ややかな目で見ろせば彼らはさらに必死になる。
 溜め息を漏らせば上げられた彼らの顔の頬はそれぞれ若干腫れており、一発ずつ軽く拳を叩き込んだのだから当たり前だ。いつまでもこのままでいるわけにもいかず、私は彼らに良い提案をする。

「分かる、分かるよ。遊びたい年頃だもんね、盛んな年頃だもんね。なんのために私たちがこうして歩き回ってるのか、その目的を見失ったとしても仕方がないよ」

 朗々と語る様は演技じみていて、こうして彼らと遊ぶことに楽しいと感じてしまう。
 訝しげに見上げてくる彼らの前にしゃがみ、にこやかに告げる。

「分かるけど理解はしていなかったからさ、私もこれを機に男遊びってのをしてみようと思うんだよね。うん、それが一番だよね。ごめんね、私がもっと柔軟に、寛容になるべきだったのに」