様子を伺うように気配をなるべく小さくして見ていると、たまたまこちらを見た1人が「あっ」と大きな声を上げた。その声の主は幹部補佐の(まこと)であり、皆が声を追いかけるようにこちらへと視線を向ける。
 そして間抜けとしか言いようのない、口を半開きにした彼らの様子に戸惑ってしまう。
 なんだ、私の顔が変なのか。男装してるとはいえあまりにも弱々しすぎたかと慌てそうになるも、彼らの目からぼろぼろと涙が落ちてきて今度こそ本当に焦る。

「か、がえっで」
「うっ、かぇっでぎた」

 泣きながら喋っているせいか、嗚咽混じりの彼らの顔はぐちゃぐちゃだ。鼻水を垂らしていることにすら気付かず、瞬きもろくにしないせいで涙はとめどなく溢れてる。
 私はそんな彼らにどうすればいいのかわからず、取り敢えずゆっくりと扉を閉めた。
 あ、あっれ〜????
 その場で頭を抱えるようにぐるぐると渦巻く思考からなんとか理性を保とうとするも、疑問と動揺からか変な汗が止まらない。
 しっかりと男装をして来たというのに、バレているのは気のせいだろうか。気のせいに違いない、気のせいと言ってくれ!扉を閉めてしまったせいで、再度開ける勇気などとうにない。あんなに泣いているということは、泣くほど私が嫌だったに違いない。そうだ、そうに違いない。そうとなれば帰るしかない。よし、帰ろう。