気力などとうに失せていた上に、体力も限界だった私は気を失いかける。それでも理性をなんとか掻き集めて虚ろな意識を紡ぎながら、重たい体を引きずるようにして路地裏に横たわった。
死んだ後にもあそこへ戻されると思うと嫌で身を隠し、ゆっくりと暗闇へと沈み込む感覚に意識が遠ざかる。やっと、解放されると思った私の視界の中に入ってきたのは綾だった。
出会い方はあまりにも特殊だったけれど、綾にとってはそんなことは些細なものだった。私がどんな人間なのかを知っても、“あの出来事”があってからもずっと変わらず私に手を差し出してくれる。
「諦めているんですね」
過去へと揺蕩う意識が唐突に現実に引き戻され、私をこちらへと返すその言葉を頭の中で反芻する。改めて言われてみればあまりにも簡単なその事実に、私はひどく落胆した。
「俺のあなたへの嫌悪感はそのすべてを諦めている目です。その目で俺の浅はかさを見透かされることも怖かった」
彼は手を強く握り、自己嫌悪に満ちた顔で言う。一度伏せられた顔はもう一度私へと向き直ると、何かを覚悟したかのようにゆっくりとその先を口にする。
「俺は何も出来なかったし、そのせいで兄にすべてを背負わせた。俺はずっと意気地無しのままなんですよ」
自虐する彼は止まらずに口を開くが、私はそれを遮った。
「――ねぇ」
私の問いかけに沈黙が部屋を包み、彼の瞳の奥に言い知れぬ恐怖が這い上がっていた。
「倖は先生のことが大事?」
死んだ後にもあそこへ戻されると思うと嫌で身を隠し、ゆっくりと暗闇へと沈み込む感覚に意識が遠ざかる。やっと、解放されると思った私の視界の中に入ってきたのは綾だった。
出会い方はあまりにも特殊だったけれど、綾にとってはそんなことは些細なものだった。私がどんな人間なのかを知っても、“あの出来事”があってからもずっと変わらず私に手を差し出してくれる。
「諦めているんですね」
過去へと揺蕩う意識が唐突に現実に引き戻され、私をこちらへと返すその言葉を頭の中で反芻する。改めて言われてみればあまりにも簡単なその事実に、私はひどく落胆した。
「俺のあなたへの嫌悪感はそのすべてを諦めている目です。その目で俺の浅はかさを見透かされることも怖かった」
彼は手を強く握り、自己嫌悪に満ちた顔で言う。一度伏せられた顔はもう一度私へと向き直ると、何かを覚悟したかのようにゆっくりとその先を口にする。
「俺は何も出来なかったし、そのせいで兄にすべてを背負わせた。俺はずっと意気地無しのままなんですよ」
自虐する彼は止まらずに口を開くが、私はそれを遮った。
「――ねぇ」
私の問いかけに沈黙が部屋を包み、彼の瞳の奥に言い知れぬ恐怖が這い上がっていた。
「倖は先生のことが大事?」
