レオの言葉が胸に沈み、視線を落とす。
 私は彼らの姫ではないのに、そんなことまでさせている状況に歯痒さを覚える。
 皺を寄せた眉間に、蒼の指が刺さって顔を持ち上げればぷっくりと頬を膨らませた可愛い顔が目の前にあった。

「なっちゃーん? 姫じゃないのにーとかって思ってるなら、それは違うからね? 僕たちは友達なんだし、友達が危ないかもってなったら助けたくもなるでしょ!」

 ぷりぷりと怒ってみせる蒼は、心から私のことを友達と思っているようだった。嘘も偽りもない、本心。
 あまりにも真っ直ぐなその言葉に、いいなぁと思ってしまう。
 私にとっての友達は家族のあいつらしかいなかった。振り返る記憶の中にふと“鬼龍の姫”を思い出した。私が姿を消した理由を教えられていなければいいのだが、そろそろ戻る頃合でもあるだろうし大丈夫だろう。
 “ここ”にいられるのも夏休み前までなのだから。

「なっちゃん?」

 考え事をしていたところ、唐突に視界に揺れる青で現実に引き戻される。心配そうに覗く彼の頭を撫でて私は笑う。

「ありがとね」

 感謝を言うのは少しだけこそばゆいものがあった。

 それから2時間程度経った頃、修人も起きたところで扉が唐突に開いた。ノックもしないのは幹部であるということで、現れたのは倖だった。