場違いにも、そこは可愛いキャラじゃないのかと言いたくなってしまう。口は災いの元。お口はチャックするのがよろしいのだ。

「うん、わかったよ」

 何を話していたのかは聞き取れなかったが、彼は何かに対して了承の意を返すとすぐに切り、それをそそくさと閉まってしまう。
 すぅっと、淡い青の瞳が撫でるように私を見る。
 彼はこれまでの雰囲気を一変させ、また人懐っこい笑みへと変えて手を取った。強く引かれてなされるがままに立ち上がる。

「それじゃあなっちゃん、一緒に来てもらおうか」

 待って欲しい。私は行く気などない。
 手を振り払い、また逃げようとするが、少し荒っぽく蒼は私を引き寄せて横抱きにする。同じくらいの背丈のはずなのに、安定感のあるそれに言葉をなくしてしまうと、彼はそのまま歩き始めてしまう。
 慌てて彼の首へとしがみつくのは、振動によって振り落とされないかという心配だ。降ろしてと、抗議しても何が面白いのか笑っているだけで人の話を聞こうともしない。なんて横暴なのだろうか。

「なっちゃんは少し、子供っぽいよね」

 心外な上に憤慨を覚えるその言葉。
 それとともに懐かしい響きのそれに、思い出さなくていいものを掘り起こされる。掻き消すその顔ぶれに、どうしようもなく会いたいと思ってしまう。
 なんて見苦しい妄執なのか。今更そんなことを思うなど、みっともない執着に他ならない。
自分から背を向けたことに対し、都合の良過ぎる考えに吐き気すら込み上げる。最低なのはどうしても治せないのか。