「情報って言うのは価値がある。その価値はもちろん“モノ”の価値と同等になるんだがね、あとになってから泣くようじゃあ売れやしないよ」

「......あなたはそうして警察にも多くの情報を流して来たようだけれど、それを知られていないとは思っていないでしょ?」

 彼女はその言葉に煙草を灰皿に押し付け、椅子から重い腰を上げた。
 彼女の背丈は女性にしてはかなり高身長の部類に入るだろう。加えてヒールを履いたその背は私よりもずっと高く、こちらを見下ろす目は警戒と敵意を滲ませる。

「大層な口を聞くね、お前。だがまぁいいさ、若いのはそうでなくちゃあ叩かれ甲斐がないからね。さぁなにが欲しい?」

「全部。知っていることの全てをちょうだい、“雛菊”の知っていること全て」

 私の言葉に大きく目を見開いた彼女は、大声を上げて笑い出す。
 そしてその笑いはすぐに重たく伸し掛るような睨みになり変わり、彼女は手を銃の形にして私の額に突きつける。

「アレに手を出すのはお前の命を投げ出すのと一緒だ。分かっていないのなら教えてやるが、解っているのなら自殺願望か?」

「あなたがこんなにも優しい人だったのは意外だったけれど、私にはその脅しは意味が無いの。あいつを地獄へ道連れにするためだけに生きてるんだ。今更ね、死ぬからと言って“待て”が出来るほど、私はお利口にはなれないんだよ」