もっと早く気付けていればなどと思いはすれど、それもまたもうどうしようもないことだ。
 私の家を知ってどうするつもりなのか。男子高校生が喜びそうないかがわしい本どころか、面白いものなどひとつも無い殺風景な部屋を思い出す。
 自身の脳内に浮かぶ疑問を追いかけ回していれば、蒼とレオは鞄を持って立ち上がる。
 思考に耽っていたものだからどうしたのかと顔を上げれば、修人と倖が迎えに来ていた。ぽかんとする私の腕を掴み立ち上がらせる修人は、無愛想にも無表情のまま帰るぞとだけ落とした。
 突然修人が教室に入って来たことで、他の生徒の空気が恐れるように静かになる。
 彼らにとって修人は“狼嵐”という暴走族のトップであり、蒼とレオをも従える恐怖や畏怖の対象なのだろう。そんな彼が私の迎えに来るというのが彼らにはおかしなことなのだろうと、周囲の様子からうかがえる。
 修人は動かない私に再度促すが、私は首を振って無理だと告げる。

「今日は用事があるから一緒には行けない」

 そう言えば彼は露骨にも眉をしかめ、その無表情に不機嫌さを滲ませる。
 それは他の生徒にとっては緊張が走ることであり、ごくりと誰かの生唾を飲み込む音が聞こえるほどに静かになる。

「用ってなんだ」

「教えないよ、教えられない。言う必要性がないんだもん。あなたには関係ないってこと」

 深紅の瞳が細められ、手が私の喉へと伸びる。指先が肌に触れ、落ちる毛先を絡めとって離される。