そんな安堵も束の間、彼はゆるりと指先を伸ばす。

「ふーん、従兄弟と暮らしてるんだ?」

「いや、一人暮らしだけど」

 と言ってからまずいと気付いても遅かった。
 詮索されるようなネタを自分から提供してしまったことに頭を抱える暇もなく、彼は眩しいくらいの笑顔でもって私を誘惑する。

「じゃあ今度遊びに行くね」

 頬を撫でる指先は首へと伝い、逃さないという意思を伝えてくる。
 顔はこんなにも可愛いのに、どこか狡猾さも持ち合わせた彼は私にとっては苦手な部類に入る。強く出られないその可愛さに、私は渋々妥協点を口にした。

「......か、考えとく」

 その場しのぎに過ぎない返事に、彼は絶対だよと念押しをしてくる。もちろん教える気などさらさらないのだが、引きつった笑いで誤魔化した。
 そんな私の頬をつつき、にやにやとした表情が非常に鬱陶しいレオは私が怒ることを楽しんでいる。手を払いのけて睨めば、怖い怖いと言いながらも意に介さないようで首を傾げる。

「嫌なことは嫌って言わないと」

「散々嫌だって言ってたのに、それを聞かなかったのはどこのどいつらか言わないと分からない?」

 誰だろうねと、とぼけるレオにはため息しか出ない。
 私の意思を無視してくるのはもう十分に分かっているのだから、まともに相手をするだけ無駄なのだ。適当に受け流しておくだけで都合のいいように解釈してくれるし、こっちも主導権を握られずに済むというもの。