記憶は1つを思い出すと芋づるのように引き摺り出され、それに囚われそうな恐怖から涙が止まらなくなる。そのまま過去に足を取られないでいられるのは、蒼の手が私の手を握っていてくれているおかげだった。
「ほら泣き止んで、いい子だから」
蒼はどこかすっきりとしていて、どうやらいつもの蒼に戻ったらしい。それが悔しくて鼻をすんっと鳴らして無理やりにでも涙を止めれば、よく出来ましたと指先で目尻に残る涙を拭われる。
淡い瞳と目がかち合うと、その額を私の額に押し当てて笑った。
「なっちゃんはさ、怖くない?」
「なにが?」
「ほら僕たち暴走族でしょ?」
「今更な上に弱いから全然怖くない」
「あはは、うん、そうだったね」
額が離れ、改めて向き合う彼の瞳はもう揺れていなく、真っ直ぐと見つめてくるそこには決心がついていた。話すことも私の反応を見ることも多少の恐怖心が残る中、彼は聞いて欲しいことがあるんだと口にする。
私は彼の手を取り、最後の確認をする。
「“それ”はあなたにとって辛いものだけれど、耐えられるの?」
少し驚いたように見開かれた淡く滲む青い目は、けれど優しく微笑むと頷いて見せた。
「聞いて欲しいんだ」
握り返す手に震えはなく、ずっと溜めていたものを聞いてくれる人の来訪を待ちわびていた。
*
不幸とかそういうものは割と有り触れたもので、きっと誰にでも降り掛かるものなんだろう。そこに他者と比べる余地はなく、本人の感じ方によって大小は決まる。
「ほら泣き止んで、いい子だから」
蒼はどこかすっきりとしていて、どうやらいつもの蒼に戻ったらしい。それが悔しくて鼻をすんっと鳴らして無理やりにでも涙を止めれば、よく出来ましたと指先で目尻に残る涙を拭われる。
淡い瞳と目がかち合うと、その額を私の額に押し当てて笑った。
「なっちゃんはさ、怖くない?」
「なにが?」
「ほら僕たち暴走族でしょ?」
「今更な上に弱いから全然怖くない」
「あはは、うん、そうだったね」
額が離れ、改めて向き合う彼の瞳はもう揺れていなく、真っ直ぐと見つめてくるそこには決心がついていた。話すことも私の反応を見ることも多少の恐怖心が残る中、彼は聞いて欲しいことがあるんだと口にする。
私は彼の手を取り、最後の確認をする。
「“それ”はあなたにとって辛いものだけれど、耐えられるの?」
少し驚いたように見開かれた淡く滲む青い目は、けれど優しく微笑むと頷いて見せた。
「聞いて欲しいんだ」
握り返す手に震えはなく、ずっと溜めていたものを聞いてくれる人の来訪を待ちわびていた。
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不幸とかそういうものは割と有り触れたもので、きっと誰にでも降り掛かるものなんだろう。そこに他者と比べる余地はなく、本人の感じ方によって大小は決まる。
