蒼が取り乱したことにも、気を失ったことにもざわつく下っ端たちからの言及を逃れるためか、上に戻ろうと提案するレオに頷いて後に続く。彼らにとっては不安材料でしかないが、かといってこれ以上の詮索をさせないためにもレオは忘れろとだけ言い残す。
そうすれば彼らは否が応でも常を取り戻す他なく、各々の時間へと戻っていく。
「......やはりこうなりましたか」
部屋に入って出迎えたのは倖の悲痛さを押し込めた声だった。
蒼の苦しげな表情を見て修人は後悔のこもる眼差しで見詰めると、奥で寝かせてやれと促す。レオはそれに頷くと彼を抱えたままさらに奥の部屋へ消え、2人を立ち尽くしたまま見送ることしか出来なかった。
後に残されたのは沈黙とどことないぎこちなさ。隠す気はなかったのだろうが、露見すれば身構えずにはいられないのは誰だって同じだ。
「......あなたは不思議な人ですね」
薄い氷が張るような空気の中、顔を見ることなく言われたその言葉。だからこそ敢えて私は彼の顔を見てから応える。
「なにが?」
白々しさなど今に始まったわけではなく、彼はゆるりとこちらを向いた。そこにあるのは貼り付けられた笑みだけで、その先を口にすることなく隠してしまう。
修人が雑誌を閉じるのと同時に奥の扉が開き、レオが頬をかきながら戻って来た。
「ごめんね、棗ちゃん」
蒼の代わりに彼が謝るものの、それは何に対する謝罪なのだろうか。
私が理不尽にも怒鳴られたからなのか。それとも私が“女”だからか。
そうすれば彼らは否が応でも常を取り戻す他なく、各々の時間へと戻っていく。
「......やはりこうなりましたか」
部屋に入って出迎えたのは倖の悲痛さを押し込めた声だった。
蒼の苦しげな表情を見て修人は後悔のこもる眼差しで見詰めると、奥で寝かせてやれと促す。レオはそれに頷くと彼を抱えたままさらに奥の部屋へ消え、2人を立ち尽くしたまま見送ることしか出来なかった。
後に残されたのは沈黙とどことないぎこちなさ。隠す気はなかったのだろうが、露見すれば身構えずにはいられないのは誰だって同じだ。
「......あなたは不思議な人ですね」
薄い氷が張るような空気の中、顔を見ることなく言われたその言葉。だからこそ敢えて私は彼の顔を見てから応える。
「なにが?」
白々しさなど今に始まったわけではなく、彼はゆるりとこちらを向いた。そこにあるのは貼り付けられた笑みだけで、その先を口にすることなく隠してしまう。
修人が雑誌を閉じるのと同時に奥の扉が開き、レオが頬をかきながら戻って来た。
「ごめんね、棗ちゃん」
蒼の代わりに彼が謝るものの、それは何に対する謝罪なのだろうか。
私が理不尽にも怒鳴られたからなのか。それとも私が“女”だからか。
