「棗ちゃん? 俺がフォローしてあげたのに誑かそうとするのはやめてくれるかなー?」

「は? 何言ってんむっ」

 おかしなことを言うレオに反論しようとすれば、彼は口の中に何かを放り込む。それは舌の上で溶けて、甘さで喉を焼いてくるチョコレートだった。

「この子は修人のお気に入りだから、分かってるよね?」

 私が口を出せないのをいいことに、またも誤解を招くようなことを言い出すレオ。
 その言葉にざわざわとした波紋が広がり、疑いの声が上がった。

「え、あの総長が?」
「あの仏像が?」
「朴念仁なのに!?」
「ようやく年頃になったんですね......」

 どうやら疑われたのは修人の方であったらしい。
 彼らは口々に修人に限って有り得ないとばかりに言うもので、レオを見上げれば彼は笑いを堪えるように震えている。その脇腹を小突けば吹き出してしまったものの、声を上げるまいと耐える様はなんというか理解し難い生き物だった。
 彼らの中から1人の男が前に歩み出ると、私の前に来て頭を下げた。

「うちの総長いい人なんで、多少無表情で無愛想でも見捨てないでください! あの人はかっこいいんで! 総長をよろしくお願いします!」

 その男に倣って他の男たちも私に頭を下げ、総長への想いを私に託してくる。
 温かなそれは私もよく知っていたもので、これを受け取らないなんてことを私には出来なかった。彼らはどれだけその力が未熟であろうと、慕う気持ちだけは何にも負けることはないだろう。