「今更......」
そう、今更悔やんだところでもう遅いのだ。
悔やむ頃にはすべては後の祭りと化していて、私はいつだって遅いのだ。
遅くて、遅過ぎて、手なんて届きようがない。
「守らなきゃ......」
呟いて立ち上がれば頭の中はいやにすっきりとしており、鉄の冷たさを忘れようと瞬きをする。
無力な私に一体何が出来ようと言うのか。きっと、“あいつ”を殺してしまえばすべての清算がつくのだろう。憎くてたまらない、あの日の私諸共に炎の中へと焚べる。
そうすればきっと、綾たちも私という重い鎖から解放されるのだ。
ああ、でもそのときは私はもう生きていないだろうと右手首を抑える。
「そのときはそのときだ」
仕方ないとばかりに呟き階段を降りた。
*
失礼します、と一応断ってから職員室の扉を開ける。途端に鼻腔にまとわりつくのは職員室独特のコーヒーの香りで、顔をしかめてから中を見渡す。
ほとんどの先生はおらず、おかげですぐに深景先生の姿を捉えることが出来た。
先生の側へと近寄ると、彼の顔にはまだ青い痣が残っていて痛々しく見える。1日で消えるわけがないとは言えど、早く治って欲しいと身勝手にも申し訳なさに言葉を詰まらせる。
「どうしたんですか?」
人当たりのいい笑みに痣は不釣り合いであった。
「......少し、良いですか?」
声色から察してくれた彼は、別室へと案内してくれて、職員用の会議室に通される。そこは防音の作りとなっていて、立ち聞きされる心配もないからだと彼は鍵を机に置く。
そう、今更悔やんだところでもう遅いのだ。
悔やむ頃にはすべては後の祭りと化していて、私はいつだって遅いのだ。
遅くて、遅過ぎて、手なんて届きようがない。
「守らなきゃ......」
呟いて立ち上がれば頭の中はいやにすっきりとしており、鉄の冷たさを忘れようと瞬きをする。
無力な私に一体何が出来ようと言うのか。きっと、“あいつ”を殺してしまえばすべての清算がつくのだろう。憎くてたまらない、あの日の私諸共に炎の中へと焚べる。
そうすればきっと、綾たちも私という重い鎖から解放されるのだ。
ああ、でもそのときは私はもう生きていないだろうと右手首を抑える。
「そのときはそのときだ」
仕方ないとばかりに呟き階段を降りた。
*
失礼します、と一応断ってから職員室の扉を開ける。途端に鼻腔にまとわりつくのは職員室独特のコーヒーの香りで、顔をしかめてから中を見渡す。
ほとんどの先生はおらず、おかげですぐに深景先生の姿を捉えることが出来た。
先生の側へと近寄ると、彼の顔にはまだ青い痣が残っていて痛々しく見える。1日で消えるわけがないとは言えど、早く治って欲しいと身勝手にも申し訳なさに言葉を詰まらせる。
「どうしたんですか?」
人当たりのいい笑みに痣は不釣り合いであった。
「......少し、良いですか?」
声色から察してくれた彼は、別室へと案内してくれて、職員用の会議室に通される。そこは防音の作りとなっていて、立ち聞きされる心配もないからだと彼は鍵を机に置く。
