「修人たちはまだなーんにも知らないから。もちろん、俺は口外するつもりもないよ。まぁそう睨まないでよ、鬼龍総長鬼麟サマ」

 本当に、彼は一体なにを知っているのか。
 得体の知れないものへの恐怖を抱きそうになる中、彼はそれでも飄々とした態度を崩さずに両の手を上げる。

「君を敵に回す度胸なんて俺にはないよ」

「そう、それは賢明だね。狼嵐を潰さなくちゃいけなくなっていたかもしれないからね」

「うん、他人には使わないさ。でもさ、君に対する取引材料としては有効だと思っているんだけど、どうかな?」

 なにを求められているのかは分からないが、天秤に載せるにはあまりにも軽過ぎるし、それの扱いを間違えれば破滅するのは自身だということを理解していないのだろうか。
 敵に回す度胸はないくせに、取引を持ち込むだけの気概はあると言うのか。あまりにも蛮勇なそれに、私の好奇心が勝ってしまう。

「矛盾したことを言うんだね。いいよ、私を騙せたお礼に使わせてあげる。でも使いどころを見誤らないように気を付けてね」

 腹を探るような言葉の節々に、同量の毒を持って返せば彼は大きく溜め息をつく。
 全身から力が抜けるように俯く彼のつむじを押してやれば、呻き声が上がるのだから面白い。

「あ゛〜、もう心臓掴まれている気分だったよ。寿命が縮んだら棗ちゃんのせいだからね」

「これでも私だって頭として在ったわけだし、生半可な態度じゃ示しがつかないでしょ」

 項垂れるそのつむじを指でつつけば、彼はまたも唸るものだからついつい何度もつついてしまう。