掠れたように低く、滲み出る殺気は抑えられないもの。
 彼は何を知っているのか、それが分からない以上下手に動くわけにもいかず、睨み上げることしかできない。

「人を殺したときの感情」

 暗く澱んでいるその瞳はなにを思っているのか。

「とは言っても自分で直接手を汚したわけじゃなくて、ただ見殺しにしただけなんだけどね」

 座ろうか、と半ば強制的に腰を下ろせば彼はそのまま私の肩に額をつける。
 動けない私をいいことに、彼は独白のように呟いた。

「――助けられたかも、しれないんだ」

 罪悪感に満ちたそれは自責の念に取り殺される寸前のもので、顔が見えないからこそ余計に危うさが際立った。
 声のかけ方を見失い、虚飾の慰めすらとうに失っているのだ。
 ただ強ばっていた体の力を抜けば、彼の体がパッと離れてにっこりと笑うレオの顔。

「なーんてね! 本気にしちゃったー?」

 舌を出しておどけて見せる彼。
 先程の懺悔は嘘だったのかと頭が理解すれば、込み上げてくる怒り。本気で心配してしまったことへの後悔も混ぜて出された舌を引っ張った。
 思いっきり引っ張っていたのをパッと手を離してやれば、彼は口元を抑えて涙目でこちらを見てくる。

「急所は勘弁してよ」

「今のはレオが悪い」

「まぁそうだけどさぁ、でも、棗ちゃんは嘘じゃないでしょ」

 疑問符をもたない言葉は既に確信を得ているのか、確認しているだけのそれには口を閉ざす。
 どこからの情報なのか、どこまでを得ているのか。