彼は感情を隠すのが上手いようで、見極めるには直接問いた方が賢明かと思われたが、倖は意図を読み取ったのか微笑むだけだ。
 その横顔は先生にそっくりで、ああやっぱり兄弟なんだなと思ってしまう。

「棗」

 不意に呼ばれたのはレオの声で、初めて呼び捨てにされたからかびっくりしていれば手を取られる。そのまま勢い良く引っ張り上げられ立ち上がれば、ふらりとバランスを崩せざすかさずレオの手が私を支える。
 どうしたものかと見上げると、彼は満面の笑みで修人へと宣言する。

「俺の勝ち〜」

 勝ち誇る彼に、一体なんの勝負なんだと言ってやりたくなる。
 呆れたとばかりにため息をつく修人は、そのまま煙草を取り出して風下に離れて火をつける。倖が俺もと立ち上がるのが意外で、修人に並べば2人して吹かし出す。
 相手をしてくれる人がいなくなったレオはつまらないなぁと零し、私の手を握ったまま顔を覗き込む。長いまつ毛に縁取られた瞳は紫がかっており、吸い込まれるようにして見つめあう。

「ねぇ、棗ちゃん?」

 握っていた手がするりと落ちて手首を掴み、けれど動けずに彼の唇から舌が覗く。

「人を刺したときの気持ちって、どんなだった?」

 思考が一瞬で真っ白く染まり、次いで赤く染って動けない。口を数度開いて自身が呼吸できていることを知り、手足の先から徐々に熱が奪われていく。
 右手首を握る彼の手が、現実逃避を許さないとばかりに強く締め上げ、そこでようやく声を出す。

「......なにを、知っている」