何があったのかなど聞かなくても他の面子は知っているらしく、止めることも当然ない。まして私が止める理由もなく、黙ってその背中を見送れば、閉まりかけた扉から顔を覗かせた蒼はにっこりと笑って爆弾を落とした。

「危ない危ない、忘れるとこだった! なっちゃーん、今朝の男って、誰?」

 見られていたのかという羞恥に呆然としていれば、彼は扉を閉めて行ってしまうのだから取り残された側の気持ちが分からないのかと内心で悪態をつく。
 わざとらしくも咳払いをし、ついでレオの方へと視線を向ける。

「アレが女遊びってことなの?」

「んー、まぁ求められたら断らないことの方が多いからなー」

 呆れと心配の混じった顔は少し歪んでいて、蒼がレオは家族だと言っていたことを思い出す。苗字が違うことも、顔立ちが違うことからも血の繋がりはないことはわかる。
 それでも家族なのだということは彼の表情が教えている。

「そんなことより、その“男”っていうのが気になりますね」

 この間は人の人間関係について口出しはするものじゃないとか言っていたくせに、面白がっていると書いた顔で笑っている倖。
 露骨に嫌そうな顔をしてやれば、追及されることはなかったが、それでも修人の視線が刺さって痛い。口にはしないくせに目で訴えてくるところにタチの悪さを感じるが、綾のことがバレる訳にはいかないだろう。
 男であったこと以上のことは彼らも分かっていないらしく、それに良かったと安堵したことは内緒だ。