彼らが無害だって思ってしまえば警戒も和らぎ、口調だって多少の砕けも見えてしまう。
 可愛いねなどと、女子顔負けの天使のような顔立ちで手を取ってくる蒼。蒼に言われてもなんだか複雑だと思ってしまうのだ。

「あんなに棘出してたのに、どういう心境の変化なのかな?」

 からかうように頭の上に手を乗せてくるレオ。懲りていないのかと目線で問えば、彼は両手を上げて降参のポーズを取った。
 未だに驚きの余韻に呑まれている倖がいちばん失礼かもしれない。人をなんだと思っているのか。
 そんな倖を現実に引き戻すように、修人の声が掛けられた。
 急に倖の顔は真剣なものへと切り替わり、黒い瞳には焦りと罪悪感があった。

「棗ちゃん、昨日工場を出る際メットを被っていませんでしたよね?」

 足の先から嫌な気配が漂い始め、じりじりと体に這い上がる。
 それを取ったのは私のせいではないが、それでも出る時には素顔を晒していたのは間違いない。
 首を縦に振れば倖は残念そうに眉を歪ませてから修人へと振り返る。
 倖とは違い、蒼とレオのにやにやとした表情に諦めろと言われている気がした。

「いい、仕方ないことだ」

 修人は倖に何かの許可を出すと、一息ついてから言葉を乗せる。

「あわよくばという気持ちがあったということに対して否定はしませんが、強要するつもりだけはなかったんです。すみませんが、あなたが工場から出る姿を目撃されていました」

 白々しい、と口にしなかったのはそれが本心からの言葉だというのが分かるからで、かと言って受け入れるつもりはない。