そこには狼嵐についての情報が連なっており、軽く目を通しただけでも笑ってしまった。
 不幸を比べるのはあまりにも無意味であると知っていながら、それでも“足りない”と言わざるを得ないだろう。

「こんな奴らが......」

 もう十分だとばかりに目を逸らせば、心葉はまたノートパソコンに向き合って何かを打ち込み始める。
 キーボードの音が車内に響くが、棗は起きることなく熟睡している。

「で、率直な感想は?」

「心底鬱陶しいな」

 言わずとも知れているだろうに、心葉はくつくつと喉を鳴らす。
 棗を受け止められるわけがない、こんな弱い奴らに俺らの大事な姫が近寄っていることに吐き気すら催す。今すぐ胸倉を掴んで、“半端なくせに首を突っ込むな”と二度と関わりたくないと思うまでいたぶってやりたい気持ちを抑えられない。
 だが今はいつでも傍にいてやれるわけではないのだ。
 少なくとも俺は平気だろうが、心葉たちが絡んでしまえば話は別になる。逃げてしまったとこれ以上思わせれば、もう戻って来ない可能性だってあるのだ。
 そばにいてやれないもどかしさは、逃げ場を失って腹のうちに巣食ったまま消化すらできないでいる。

「着きました」

 運転手の声に顔を上げれば自身のマンションの前まで着いており、棗を抱えたまま車を降りるとドアを閉めようとする心葉が見上げた。

「棗に言っておいて欲しいんだけど」

 心葉は寂しいとばかりに眉を下げており、棗に撫でてもらいたいのだと口にしなくても見て取れた。