私が落ち着くまで雅姫さんは待っていてくれて、私の顔を見ながら優しい笑顔で。

 『もっと早く迎えに行きたかったけど、美佐の問題が終わらないことには、同じことの繰り返しだから、時間が掛かってしまってすまない』


 なんで雅姫さんが頭を下げるの…。

 雅姫さんが悪いわけではないのに、何だか…せつないな……。


 『だけど、もう大丈夫だから全ての問題は解決したから、もう心配はいらない』


 問題は解決?子供のことは、どうなったの??仕事は?


 『桜陽が一番聞きたいことは子供のことだろう?だか、前にも言ったが俺の子供ではない、それは絶対嘘はない。美佐の前で泥酔した覚えもないし、抱いたこともない』


 キッパリと否定する強い言葉。

 『仕事のことも心配はいらない』

 私の髪に触れながら、ふっと雅姫さんの微笑みが漏れて、その微笑みで肩の力がスッと抜けていく。


 『だからもう大丈夫、3人は最初からやり直すためにイギリスへ行ったよ』


 イギリス?


 『もともと親友だった奴は、大企業の御曹司で今度はイギリスの支社長になるんだ、どんな理由があれ二人が決めたこと』



 御曹司で社長なんて、別世界!

 そんな凄い世界の人は毎日が幸せだと思っていたのに…。


 『皆な見えないだけで、悩みも笑いも涙も沢山あるんだよ、手探りで幸せを探して時にはすれ違いもある。』


 二人の額が触れあう。

 『きっと俺達もすれ違いも沢山あるだろう、桜陽を悲しませてしまうかも知れない。それでも、どんな時も、嬉しい時も悲しい時も必ず例え小さな話でも二人で会話を忘れずしよう、俺は桜陽にア・イ・シ・テ・ルと言葉にするよ』


 愛してるよ桜陽


 自然に唇が触れあい、何度も、何度も唇の感触を味わうように、深く、甘く。身体が痺れていく。


 私の心の中の砂の中に、蕾から花がゆっくりと時間をかけてふぁっと開いていく。


 花の名前は分からないけれど、甘い香りの花。雅姫さんが開かせてくれた砂の花。お互いいつの間にか自然と笑顔で笑いあっていた。