どうして私は雅姫さんに抱きしめられているの?やっとそこの疑問に気がついて、夢ではなく現実なら何でだろう?


 私はゆっくり顔をあげ、不思議そうに顔をじっと見つめる。


 『覚えてないのか?』

 何が?

 『向日葵さんの部屋で彼女の顔を見たとたん、意識を失ったんだよ。それで直ぐに彼女が俺に連絡をしてくれたんだ』


 心配そうに私の顔を覗き込む。

 雅姫さんは溜息をもらして『無理をしすぎだ、たのむから命を大切にしてくれ』


 雅姫さんの切ない声は初めてで……


 私は素直に 「ごめんなさい……。」

 抱きしめる腕にまたさらに力が入る。


 腕の中で安心した時、一瞬あの夜の美佐さんの言葉が頭を横切る…ダメ!


 身体に力が入り雅姫さんの腕から逃げようとする。


 あの夜から私はもっと「強くならないと」と決めたの!


 ……決めたの!!

 
 『強くなる必要なんかない、誰かに寄り添えばいいんだよ。甘えて支えられる人はそれが出来る、生き物だと俺は思っている』


 「辛いこと…ばかりで、弱いから…逃げて…」


 目が潤んでくる。


 『逃げることは悪い事ではない、それは心と身体を休める大切な時間なんだ。逃げるこも必要なんだよ。だから逃げてもいいんだ、必ず帰れる場所はあるから』


 私の背中を擦りながら優しい声で。


 『桜陽は俺の所に帰って来てくれたもう一度言うよ、おかえり桜陽」


 もう美佐さんこととか、今は忘れさせてただこの腕の中で泣きたいの。