『雅姫から離れて…、私達の間には息子がいるのよ、子供から父親を奪わないで、息子が死んでしまう!』
最後の言葉には涙まじりの、それでも諦めない、彼を私に渡したくないと伝わってくる。
でも雅姫さんは自分の子供では無いと言っていた、なのに彼女は彼の子供だと言っている。
「雅姫さんは自分の子供ではないと言っていました、なぜ嘘を…」
美佐さんは表情を変えることなく、でも薄っすらと笑みを浮かべてきた。段々と余裕のある表情に。
『わたしはどうしても雅姫の子供が欲しかった。だから彼を泥酔させて私を抱かせての、薬も少し使ったかしら』
……っな、なんてことを!
『雅姫はアメリカなんて行かせない、それだけではない、もしあなたを選んだら、雅姫を医師としての仕事も出来ないようにするわ』
一歩、私に近寄ってくる。
『忠告してあげる、離れないなら貴方のアメリカ行きを邪魔してあげる、それぐらい私には簡単なことなの、私を甘く見ると泣くのは貴方よ…』
美佐さんはくるっと背中ごしに、『雅姫は医師を続けられるかしら』と
私にふ、ふと笑いを残して去って行った。
全身が砂ようになっていく……。
大声を出して叫びたい、何故私なの!
アスファルトに私の涙が吸い込まれ、小さな雨粒がポツン、ポツン…と私の涙を隠すように降ってきた。



