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 中学1年夏。いつものように朝を母の声とともに目が覚め、慌てて朝食を取り走って学校へ行く。

 何も変わらない毎日、そんな日の授業中、私は分けも分からないまま先生と病院へ行った。

 そこには涙を流しているおばあちゃんが…


 
 幸せだった毎日が一瞬にして、ガラスのように粉々に砕け散り、風のように飛んで無くなった。


 家の中は真っ暗になり、キッチンからは優しい母の笑顔は亡くなり、テーブルからは真剣に新聞を読む父の姿も消えた。


 二人とも車で信号待ちをしていた所、後ろから居眠り運転のトラックが……


 いきなり変わった日常を受け入れることが出来なくて、衝動的に二人の所へ行きたいと腕に刃物で切りつけた。


 でも死ぬことは出来なかった…


 そのキズはいまでも残っている。


 誰にも見せたくないキズ…


 おばあちゃんは私を必死に元気付けようと、どんな時も天使の話しをしてくれた。


 おばあちゃんが作った天使の物語り、父と母はいつも笑顔だつたから天国でも愛されているから大丈夫。


 これからはおばあちゃんと天使が父と母の代わりに守ってくれる。


 笑顔の桜陽をね。


 おばあちゃんの最後の言葉が「幸せになって、笑顔を忘れないで」


 それから泣いてない…


 幸せを掴んだら、またそれを無くした時の辛さはもう味わいたくない。


 生まれた時から幸せには縁が無い物だと思っているから。


 おばあちゃんは絶対幸せになれると、いつも私に言ってくれたけど。


 幸せを掴んでもそれが長く続くのか不安…


 幸せを実感したら形ある物が手の平から砂のように流れ落ちて行った。


 ギュッと握ってもムダ…


 流れるものは止められない。


 毎日笑顔でいるけれどあの日の心の涙は止められないまま。


 その代わりお客様の幸せいっぱいの顔を見られてたらそれでいい。


 その手伝いを少しでもしたい。


 だからこの仕事をずっと続けていきたい、沢山の笑顔のために、もっともっと上を目指したい。


 この仕事が大好き!


 古くさい言い方だけど仕事に恋してる、なんてネ!



 うっすら目を開けてベッドの上から空を見上げる、長い夢を見ていたような気がする。


 空はいつもと変わらない、うん!決めた。


 私らしく!


 どんな時も!


 いつか涙も止まるかなぁ〜、沢山の笑顔に会えたなら。


 
 恋は私を笑顔にしてくれない…


 胸の痛みとか知りたくないの。