泥甘な恋に溺れて





席にはまだ桜良の鞄が置いてあった。








桜良の姿がないな....






なんだかんだ今日は桜良と一言も話せてない気がする....






「ったく!あんたちゃんと優真くんに私の事勧めてくれたんでしょうね!」




「はい...ちゃんと言いましたよ.....」





──バンッ!






「じゃあなんで優真くんは私に冷たいのよ!これじゃあ逆効果じゃないっ!」




この声って....





廊下に人がいないから良く響く。





柱の影に身を潜めて覗いた。






「わ、わかんないです....」







「わかんないじゃないわよっ!」






バッと手が上がる。





危ない!!!




ガシッ!




咄嗟に出て桐崎の腕を掴んだ。




「これどうゆうこと?」





なんで桜良に手をあげようとしてんだ






桐崎は罰が悪そうな顔をして口を噤んでいる。