次の日の朝、
今日から初出勤の私は神崎さんの車で
会社へ向かっていた。


「か、神崎さん...
どうしましょう...緊張してきました...」


緊張した面持ちで胸を抑える私に
神崎さんは運転しながらチラッと目を向けると、フッと笑って視線を前に戻した。


「大丈夫だよ、かよ子さん。
基本は部屋で一人で絵を描いてもらうから
そんなに他の社員と関わることはないよ」


「そ、そうですよね...」


私は自分を納得させるように
“うん、うん”と何度もうなずく。


「僕は別の意味で心配だな...」


そんな私を見て神崎さんは笑いながらも
複雑な表情を浮かべていた。

別の意味...?

私は神崎さんの言葉に首をかしげていると
車は会社の駐車場に入って行った。


神崎さんは駐車スペースにバックで停車させると、ハンドルに寄り掛かりながら
私の顔ををのぞきこんだ。


「かよ子さん、
僕も仕事があるから
なかなか見に行くことはできないけど
知らない男に着いていっちゃダメだよ!」

神崎さんは私を何だと思っているのだろう?
小さな子供じゃあるまいし...
知らない人になんて着いて行くわけがない...


「そ、そんなに子供じゃありません...」



私がムッと唇を尖らせると
神崎さんは困ったように微笑んだ。


「ハハッ。ごめんごめん!
可愛いから連れ去られちゃうんじゃないかと
心配になってしまうんだよ。」


機嫌直して...と頭に手を置いて覗き込む神崎さんに照れ臭くて窓の外に顔を向けた。

神崎さんは困った表情のまま
行こうか...と呟くと車から降りた。

そして反対側にまわると、助手席のドアを開けてくれた。


「あ、あの...怒ってるわけではないです...」

私は助手席から降りながら呟く。

「あぁ。分かってるよ。
わかってるんだけどね...どうやら僕は君を独り占めしたくてたまらないらしい...」


神崎さんは私の頬に手を当てると
唇に深く甘いキスを落とした。