一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない

「じゃあ...カヨ子さんがほしい...」


「えっ...」


神崎さんの思いがけない言葉に
私は言葉を失う。


「...と言いたいところだけど
カヨ子さんの気持ちもあるしね...
じゃあそうだな...
前に話したホテルに飾る絵画を描いてもらいたい」

私の絵なんて一文にもならないのに、
それだけでよいのかと恐縮しながらも、
「わ、私の絵で良ければ...」
私はコクリと頷いた。

「よし決まりだ!
絵の完成具合も随時見ていきたいから
絵はうちの会社で描いてもらうよ!
1つ小さいけど物置として余ってる部屋があるから、そこを今週中に空けておくよ」


「は、はい...」


どんどん話を進める神崎さんに戸惑いながらも、私はただ頷くことしかできない。


「あと家から通うにはかなり距離があるから
絵が完成するまでの間
うちのマンションに住んでもらうよ」


「えっ!?そ、それはちょっと...」


さすがにその提案には同意できない。


「部屋も余ってるし、
別に一緒に寝るわけじゃないからいいだろ?
それに残念ながら、俺は仕事でなかなか家に
帰れないことも多いとおもうし...」


神崎さんの言葉に私はウ~ンと考え込んだ。


確かに部屋も沢山ありそうだし...

部屋が別々なら問題ないような気がする...


しかも極度の人見知りの私だけど
神崎さんとは随分緊張せず話せるようになってきた。


「わ、分かりました...

よろしくお願いします...」


私は神崎さんに向かって頭を下げた。


「良かった...今から訂正は無しだよ!
それとこれはあくまでビジネスだから
絵の対価はちゃんと払うよ」


「えっ!?でもそれではあまりにも
私の方しか得がないような気が...」


「そんなことはないけど...

かよ子さんが気が引けるなら
もう1つお願い聞いてもらおうかな...

また決まったらお願いするよ」


そう微笑む神崎さんに私は納得して
こくんと頷いた。


「ごちそうさま。

美味しくてあっという間に
食べ終えてしまったよ。」


「お、お粗末様です」


「先にお風呂沸かしてくるから
かよ子さんはゆっくり食べててね」


そう言ってかなり上機嫌の神崎さんは
鼻歌まじりにお風呂場へと向かって行った。