メグは私の言葉を聞いてホッとしたように
身を乗り出していた体を引っ込めた。

そして今度は少し照れくさそうにに
「あのね...今日はかよこにある報告があってきたの」とぼそっと呟いた。
しかし、恥ずかしいことなのかモジモジしてなかなか口を開かない。

「なに?」と私はメグの言葉をせかす。

すると、メグは意を決したように姿勢を正した。

「実はね。啓太にプロポーズされたんだ」

照れくさいのか頬を赤らめている。


私はびっくりして飲んでいた珈琲が気管に入ってしまい、ゴホッと咳払いした。

「えっ...!?ほんと!!」


「うん...」

メグは恥ずかしそうに頷いた。

「そっかぁ...メグがとうとう結婚かあ...
おめでとう!」

私の心臓はまるで自分がプロポーズでもされたようにドキドキと鼓動を打っている。

「ありがと。

だからね...
独身最後の思い出にカヨ子と
一緒に行きたいの。」


私はメグの言葉にウルッと目頭が熱くなった。

メグが待ち望んでたプロポーズだったから
すごく嬉しい!...はずなのに、なんだか私の心は寂しくて仕方がない。

なんだかメグがすごく遠いところに行っちゃうような気がして...

そんな気持ちを隠すように私は
メグに笑顔を向ける。

「うん!
そういうことなら
結婚のお祝いも兼ねてお供します!」

私は深々と頭を下げる

「やったー!約束!

結婚式は来春の予定だから
そっちも出席してよね!」

そう言ってはしゃいでいるメグは昔、
ピクニックの予定を経てていたときのように
ウキウキと嬉しそうだ。

そんなメグの姿に私の顔も自然とほころぶ。

メグに本当の幸せを与えることは友達の私にはできない。
きっと啓太くんと結婚したら今よりもっとメグを笑顔にしてくれるだろう。

「もちろん出席するよ!」

私の答えにメグは満面の笑みを浮かべた。
しかし、私の後ろの壁時計を見て一瞬で顔が青褪める。

「あっ!?もうこんな時間!!
明日仕事早いからそろそろ帰るね!
個展に出す絵は準備出来てる?」

ガタっと椅子を鳴らして立ち上がるメグに私も急いで立ち上がる。

「うん!いつもありがと。
すぐに台車に乗せて車まで持ってくね」


それからメグの赤い小さな自動車に
二人で個展に出品する絵を
急いで車に積み込んでいった。

全て積み終わると
メグは運転席へと乗り込んだ。

そして、「じゃあ、また来るね!」
と運転席から手を振って車を発進させた。

車は暗くなりかけた森の道に消えて行く。

私はメグが去ったあとの静けさにフゥっと
寂しさを吐き出すと家の中に入っていった。