神崎さんが思いにふけっているころ、私はお昼ご飯の支度に取りかかっていた。


邪魔になる長い黒髪を一つに纏めるとキッチンの前に立つ。


お昼は簡単にざる蕎麦にしよう...




鍋で麺を茹でること3分。

私はそばを一本、菜箸で摘まんで口に入れてつるんとすすった。

「うん、ちょうどいい固さ」

思わず顔が綻ばせると、ボウルに入れた冷水でしめて水気を切り、それをお皿に盛りつけた。


畑で取れたネギと大根おろしを添えて出来上がりだ

うんうん、美味しそう。

一人出来上がったお蕎麦を前に満足していると

トントン

玄関をノックする音が聞こえてきた。


ん?こんな平日の昼間に誰だろう?

まさかっ、神崎さんっ。

しかし、玄関まで行って、覗き穴から確認するとそこにはメグの姿があった。

メグ?

平日は仕事のはずなのに。

私は急いで鍵を回して扉を開く。


「メグ?どうしたの!?仕事は?」

メグが連絡なしに突然来ることは日常茶飯事なのだが今日はいつもとなんだか様子が違った。
私の問いにメグは何も答えず
真っ青な顔で立ったままなのだ。

メグの様子が変だ...

胸の辺りがザワザワと騒ぎ出す。

放心状態のままのメグの肩を抱くと
「メグ、取り敢えず家に入ろう...」
リビングまで連れていきソファへそっと座らせた。


私は冷蔵庫からお茶を取り出すと
グラスに注いでソファの前の小さなテーブルの上に置いた。
そしてメグの横にそっと腰掛ける。

「メグ?何かあった?」

メグに優しく語りかけた。

するとメグの瞳はみるみるうちに涙で溢れ
それを拭うことなく震える声で話し始めた。