一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない

「ごめん、母さん。
かよ子さんを失うくらいなら
社長の椅子なんていらない...」


そう言って再び走り出そうとする俺を
「待ちなさい!!」
母さんが更に鋭い口調で呼び止めた。


「母さん!!」


俺は苛立ちを抑えきれずに
母さんを睨み付ける。


「行くなら、私にちゃんと出張先の仕事を
引き継ぎしてから行きなさい。」


「えっ...?」


「それから、今日中に必ずあの子を
連れ戻しなさい。」


「母さんそれって...」


「女の一人、居なくなったくらいで
仕事を投げ出されたんじゃ、
たまったもんじゃないわ。
それに...
翼があの子じゃなきゃ幸せになれないんなら
許すしかないでしょ」


母さんが僅かだかフッと微笑んだ。


その瞬間、
『お母様はちゃんと神崎さんのこと
一番に考えてくれてますよ。』
かよ子さんの手紙に書かれた文面が俺の頭をよぎる。


そうだね、かよ子さん...


俺もフッと穏やかに微笑んだ。



「さっ、そんなとこに突っ立ってないで
早く引き継ぎしなさい!」


あっという間に母さんはいつもの
鋭い顔付きに戻り、社長室へと入って行く。


俺は「母さん、ありがと...」と
呟くと母さんの後を追って社長室へと入って行った。