『お母様へ
お体の具合はいかがですか?
きっと私のせいで
お母様に負担を与えてしまっていたのですね。
本当にごめんなさい。
私はずっと、
翼さんのそばにいたいという一心で
自分ことばかり考えてきました。
お母様の翼さんのことを大切に思う気持ちを
蔑ろにして自分のことしか考えていなかったんです。
お母様が倒れて気付くなんて、
そんな私が翼さんの側にいる資格はないです。
私は元いた自分の場所に帰ろうと思います。
それがきっと私にも翼さんにも
一番良い選択だと思います。
お母様は早くお体を治して
翼さんと仲直りしていただくことを願っています。
陰ながらではありますが、
皆さまの幸せを心よりお祈りしています。
杉崎 かよ子』
紅葉は手紙を読み終えると
フゥッとひとつ息を吐いた。
そして、
「ほんと、バカな子ね...」
呆れたようにボソっと呟いた。
そして、ベッドから立ち上がると
すぐさまパジャマを脱ぎ始めた。
「おい?どこに行くんだ?」
慌てる源蔵に紅葉はチラッと目を向けると
「会社に戻るわ。
2日も眠れば十分よ」
そう言って、スーツに腕を通し始めた。
源蔵は
「私が止めても、行くんだろうがな...」
はぁっと諦めたように呟いた。
「紅葉とかよ子さんはよく似てるよ...」
「対照的の間違いじゃないのかしら?」
紅葉はスーツを整えながら、
納得いかないというように眉をひそめた。
「好きな仕事になると周りが見えなくなるまでのめり込んでしまうとこがよく似てる...
二人は気が合うと思うんだがな...」
「どうかしら...
まあ、仕事に誇りを持つ人間は
嫌いじゃないわね...
私は会社にもどるから後は頼んだわ。」
そう言って紅葉はスーツに身を包むと
颯爽と病室を後にした。
そんな紅葉の後ろ姿を見送った源蔵は
「そういう女性に心奪われた私と翼も
似た者同士なのかな...」
ハハッと笑いながら呟いた。



