そんな紅葉に源蔵が柔らかい笑みを浮かべて
口を開いた。
「覚えとるか?
翼が小さい頃、仕事でなかなか遊びになんて
連れ出してやれなくて
やっと時間を作ってフラワーパークに
遊びに行ったときのこと...」
源蔵が絵画を見つめながら
昔を懐かしむように微笑えんでいる。
「子どもの遊ぶような遊具なんてなくて
花を三人で見て回っただけなのに
帰り際、翼が帰りたくないって
駄々をこねたんだっけなぁ...
結局、閉園まで粘って帰りの車の中で
翼は爆睡だったな...」
紅葉も思い返すように
絵の中の幼い翼を見つめている。
「ええ、覚えてるわ...
いつも手の掛からなかった翼が
あんなにも私に反抗したのは後にも先にも
あれが最後だったんですから...
いえ...
違うわね...
今が一番駄々をこねてるかしら...」
紅葉は困ったようにフッと微笑んだ。
「翼はかよ子ちゃんのこととなると
必死だからな...
でも、かよ子ちゃんと一緒にいるときの翼は
とても幸せそうな良い顔をしてるんだよ...」
紅葉は源蔵の話に耳を傾けながら
「そうね...」
と、ひと言呟いた。
その時、紅葉な箱の底に添えられていた
1枚の便箋に気づいて手に取った。
「かよ子ちゃんからの手紙か?」
「そうみたいね...」
紅葉は絵画を箱に戻すと
便箋の中の手紙に開いた。



