一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない

それから会社に戻った私はいつも通り
仕事部屋の片付けを終えて、
いつも通りスーパーで買い物を済ませると
いつも通り夕食の支度に取りかかった。


しかし、一つ違うことは
すでに心のうちでは
神崎さんの家を出る決心をかためていることだった。


「作り過ぎちゃったな...」



神崎さんの好物を全て作っていたら
イベント並の豪華なごちそうになってしまい
テーブルに並べた料理を見つめて
苦笑いした。


今日が神崎さんとの最後の晩餐か...


そう考えただけですぐに目頭の奥から
熱いものが込み上げてくる。


ダメ...今日だけは泣いちゃいけない...


フゥッと震える息を吐き出すと
キッチンに入って冷蔵庫から
翼の冷えた缶ビールを取り出した。


そして、カチッとタブを開けると
プシュッという音と共に
ほろ苦い香りがの鼻をかすめる。


そして缶の口に唇をつけると
ゴクゴクっと二口ほど喉へ流し込む。


ビールの苦みにウッと思わず顔をしかめた。


やっぱり苦手だな...


しかし、いつもは苦手なビールも
苦味とアルコールが
今日は胸の痛みを和らげる鎮痛剤の役割をしてくれている。


すると、ガチャリと玄関の方から
ドアの開く音が聞こえた。