一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない


お母様はドアを開けて立ったまま、
微笑むでもなく、睨むでもなく、
鋭く冷めた視線を浴びせる。


「あ、あの...お母様...?」


心の準備ができないまま、
動揺してしまい言葉が続かない。


「まだ、あなたのお母さんになったわけでもないわ。
それに挨拶が先じゃないかしら。」


腕を組んで淡々と話すお母様に
「す、すみません!
...あっ...あの、
ご無沙汰しております」
バッと頭を下げた。


「まあ、いいわ。
顔を上げなさい。」


私はお母様の言葉にゆっくりと顔を上げた。


一ヶ月ぶりに会ったお母様は
相変わらずの鋭い喋り口調だが
前に会ったときよりも
痩せたような気がする。


それに心なしか顔色も悪い。


私は心配になって「あの...」と
声を掛けようとしたが
「今日はあなたに話があって
早めに仕事を終わらせて日本に帰ってきました」
それもお母様の鋭い言葉で遮られてしまう。


「はい...」


私の胸が不安が過る。


良い話でないことはお母様が放つ空気から
ひしひしと伝わってくるのだ。


「単刀直入に言います。
翼とは別れてちょうだい。」


やはり不安は的中した。


しかし、神崎さんがいない今、
反論することも出来ず
ただ黙ってうつむくことしかできない。


「ここ一ヶ月の間、あの子から
毎日のように電話がありました。
翼は会社のトップなんです。
一時の恋にうつつを抜かして
仕事を疎かにするのは言語道断です。

あなたは容姿は申し分無いのだから
いくらでも条件の良い男性は見つかるはずよ。
でも、この会社の社長はあの子しかいないの。
翼にとっても公私ともに支えてくれる
しっかりとした女性の方が相応しいのです。
分かるわよね?」